GIS(地理情報システム)の活用事例

GIS(ジーアイエス):地理情報システムとは、Geographic Information Systemの略称で、「地理情報システム」と訳され、地図にさまざまなデータを重ねて見える化し分析・解析することで、業務の改善や社会課題の解決につなげることのできるシステムです。

このページでは、GISの活用事例をベースに、GISのメリットやポイントについて詳しくご紹介いたします。

1.GISとは?

GISは、地理情報システム(Geographic Information System)の略称で、地理的なデータを収集、管理、分析、表示するためのシステムです。

GISは都市計画、災害管理、交通計画、マーケティングなど多種多用な分野で活用されており、私たちの生活やビジネスを支えています。
また、GISは情報の視覚化や空間データの活用において非常に有益なツールで、企業や自治体が抱える問題の解決や意思決定を支援することが可能です。

GISで出来ること

GIS(地理情報システム)はさまざまなことに活用できるツールですが、例えば以下のようなことが可能です。

  • ビジュアライゼーション機能
    地図化可能な表データを描画し、2Dや3Dの地図として表示する
  • 空間的な分析機能
    複数の地図データをレイヤーとして重ね合わせ、近接関係、重なり、集約、補完などの空間的な分析を行う
  • データ作成機能
    CAD等のデータを地図データ化し、住所からの地図データ変換、分析結果としての地図データを生成する
  • ユーザーインターフェース機能
    地図を直接操作することができ、地図の移動・拡大、対象の選択、データの入力が可能

GISのメリット

GIS(地理情報システム)の利用には、主に以下のようなメリットがあります。

  • 空間的情報の視覚化とパターンの特定
    GISは地理データを地図やグラフとして視覚化することが可能で、パターンや関係性を直感的に把握することができます。
    これにより、リソースの最適化、問題の把握、予知保全などの目的に役立ちます。
  • データの統合と管理
    GISはさまざまな地理データを集め、統合して管理することができます。
    異なるデータ同士を紐づけることで、複数の情報を総合的に分析することが可能です。
  • トレンドの見える化と意思決定の支援
    GISはさまざまな角度から地理データの分析を行うことで、地理的なパターンやトレンドを特定し、洞察を得ることが可能です。
    これにより、より効果的な意思決定を行うことができます。

これらはGISのメリットの一部ですが、このような効果を得られることからGISはさまざまな分野で幅広く活用されています。

GIS(地理情報システム)の概要と仕組みについては、下記のページで詳しくご紹介しておりますので、そちらをご覧ください。

2.GISの活用事例~GISを有効活用しよう~

多岐にわたる分野で有効活用されているGISですが、このページでは活用事例を3つピックアップし、ご紹介いたします。

①エリアマーケティング

まず一番初めにご紹介するのは、「適地選定」「商圏分析」などとも呼ばれている「エリアマーケティング」での活用例です。

大量の店舗を持つチェーン店、例えば、レストランやファーストフード、コンビニ、カーディーラーなどは、実はGISを用いてロジカルに出店計画を検討しています。
また昨今では、メーカーにおける販売網の開拓やリテールサポートなどでも、こうした取り組みが行われています。

初めてこうした取り組みをされようとするお客様から、よくお聞きする言葉が、
「どこに店舗を作るのが一番良いかが分かるだけなら、店舗の場所を決める時だけGISを使えばいいんでしょ?」
というものです。

いえいえ、簡易な統計の集計程度ならそこまでかもしれませんが、実は全然違うのです。
出店からマーケティング、候補地の管理などPDCAで継続的にサイクルを回して継続的により良い状態へとビジネスを導くのが、より良い活用方法です。

エリアマーケティングを実行するためのサイクル エリアマーケティングを実行するためのサイクル

【参考】エリアマーケティングを実行するためのサイクル

それでは、エリアマーケティングにおけるプロセスを順を追って簡単にご紹介します。

エリアマーケティング実行のための各プロセスの役割
適地選定

販売店やサービス拠点などを新設するにあたって、最適な場所を選定します。
候補地を中心に、設定した時間ないしは距離の移動圏を作成し、その範囲に含まれる統計などの情報を集計します。
候補地の中で、もっともターゲットとなる人口や世帯などを含んでいる候補地を判別します。

適地選定
商圏分析

こちらは新規の店舗と既存の店舗、どちらも対象となります。
各店舗の商圏に含まれる統計情報を分析し、店舗が持っている商圏ごとのポテンシャルや特性を数値化します。
ポテンシャルの高い低いといったのみならず、同じポテンシャル(例:人口)でも男性が多い、女性が多い、などの傾向もあらわにします。

※商圏:
 特定の商店、商店街、さらに中心地としての都市の商業機能の勢力、影響の及ぶ地域的範囲のこと。

出典:コトバンク[小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) ]

顧客分析

各店舗の顧客データを用い、顧客の一定の割合を含む商圏を作成します。
顧客の50%、70%、90%といった具合です。
その結果、その店舗の実際の商圏の形が浮き彫りになり、統計をベースに分析した商圏とのギャップをクリアにします。

顧客分析
マーケティング

明確になったギャップに基づき、商圏内でポテンシャルがあるにも関わらず顧客を呼び込めていないエリアを見つけだし、マーケティングのターゲット地域を絞り込みます。
商圏のみに関わらず、より広域を対象にターゲットとなる人口の多いエリアの抽出なども可能です。

ビジネス状況の可視化

顧客データに紐づいた売り上げデータを地域で集計し、どの地域でどれぐらいの売り上げがあるかを、色や点、3D化されたエリアの高さで可視化します。
BIソフトなどの地図機能でもおこなわれているのはこの用途です。

テリトリー策定

各地域でのビジネスを伸ばすためには限られた営業リソースを有効に使うことが必要です。
担当移動距離とビジネスポテンシャルの平準化を空間的に分析し、各営業にとって最適な営業エリアを導き出します。

営業支援

地図データ化された顧客データはモバイルのGISで閲覧可能にすることによって、営業活動時に効率的な営業活動を実現します。

営業支援
現地調査

営業やエリアマネージャーが、店舗や顧客を訪問した際に、様々な発見を釣ることがあります。
そうしたデータをモバイルから入力することで、店舗や顧客のデータを拡充していくことが可能です。

候補地の管理

また、さらにビジネスエリアを広げるためには、さらなる出店が必要になります。
寄せられる出店候補地をデータ化しておくことによって、次なる営業戦略に適合して出店地を素早く見つけ出すことが可能です。

このように、一口で「エリアマーケティング」といってもその指し示す領域は広く、

  • 出店計画
  • リテールサポート
  • 営業活動
  • 経営計画
など、多岐に及びます。

エリアマーケティングの実施方法

前項ではエリアマーケティングとはどの様な目的で、どの様なプロセスがあり、どう応用できるのか、をご紹介いたしました。
本項ではそのいくつかの機能においてどういった手法で分析が行われているのか、店舗の地図データ化から商圏での統計の集計までの実施方法についてご紹介いたします。

店舗や顧客のリストを地図化「ジオコーディング」

まず、エリアマーケティングにおいて起点になるのが自社の持つ店舗や顧客データの地図化です。
これらは「点」として扱われるので、1つの座標(X,Y)となります。

住所を座標に変換するのは、カーナビやWebの地図でもおなじみの機能です。
その仕組みをご紹介します。
(エリアマーケティングでは、大量の件数をリストで投入し、処理しますが、仕組みは同じです。)

まず、下記のような店舗のリストをGISに投入したとします。

自社店舗リスト 自社店舗リスト

多くのGISでは住所を座標に変換する機能があり、同時に「住所の辞書」とも言うべきデータを持っています。
これは「この住所は、この座標」という情報が格納された大きなデータです。

住所辞書テーブル 住所辞書テーブル

この「住所の辞書」と突き合わせながら、GISは「住所」を「座標」に変換して、点の地図データ化します。

商圏作成

次に行うのは「商圏の作成」です。
店舗を起点として、や、移動距離移動時間などを作成し、ビジネスのエリアを作成します。
円商圏はシンプルです。

右記の図のように店舗を中心として指定した半径の円を作成し、商圏とします。

商圏作成

実際の商圏分析でよく使われるのが、右記の図のような移動距離移動時間を用いた商圏です。
たとえば、
「道のり1キロメールで移動可能な範囲」
「10分以内に移動可能な範囲」
を作成し、これを商圏とします。

これを作成するためにはカーナビなどで使われている、道路のデータが用いられます。

商圏作成

また、商圏は広さを変えて複数作成する場合があります。
外側の商圏が、内側の商圏を含むか含まないかは、目的によって使い分けます。

商圏作成
商圏作成
商圏分析

次に商圏を用いて、対象となるターゲットの世帯数人口を算出します。
ここでは下記のように、四角形を人口データの入った統計情報とします。
商圏が重なる統計情報を、面積按分(※1)して集計します。

※1:データを商圏で利用する場合に、商圏範囲の面積の比率に応じてデータを計算する方法のことです。
商圏作成>

実際には、この統計情報が四角い「メッシュ(※2)」や国勢調査の単位である「調査区」「行政界」などいくつかの形状のものがあり、商圏も前述のとおり、時間商圏距離商圏の様な形状を用いることもありますが、処理の方法は同じです。

 
※2:地図をマス目の形に分割したもので、GISの統計や分析で利用されます。横方向が500m、250mのものがよく使用されます。

こうして、様々なデータを集計したものが、商圏のデータとなります。
商圏におけるターゲットとなる人口や世帯数が明確になることによって、商圏のビジネス規模が数値化されます。

エリアマーケティングの実施例:カフェの新規出店計画

理解を深めるために、エリアマーケティングの実施方法を、カフェを新規出店するケースに当てはめて考えてみましょう。

若者をターゲットとしたインスタ映えするオシャレなカフェを、青山・表参道エリアに出店する計画を立てています。
この場合、「青山・表参道」ということで、居住者というよりも買い物や遊びに来た人が対象になると思われますので、携帯電話のデータをベースとした、流動人口データを用い(※3)、このデータを商圏で集計します。

そうすることで、そのカフェの商圏に、ターゲット顧客の年代や性別の方が、昼間にどれぐらい立ち寄るのかがわかるため、店舗のポテンシャルが数値としてわかります。
さらに時間帯別の人口もわかるため、売り上げ目標達成のために必要な、最適な開店時間、閉店時間を設定することができるようになりました。

カフェの商圏分析
※3:「昼間人口」と言われる、国勢調査の居住者から、他地域に通勤・通学する人口を引き、逆に通勤・通学してくる人を加算した人口のデータも存在しますが、このデータですと、買い物や遊びに来た人、どこかへ行く途中に立ち寄った人がデータに反映されません。

もちろん他にも様々な分析、集計の方法がありますが、このページでは商圏分析で必須となる、

  • ジオコーディング
  • 商圏作成
  • 統計の集計
についてご紹介いたしました。

②防災・災害対策

次にご紹介するのは、防災・災害対策におけるGIS活用事例です。
活用方法のご説明の前に、まず、BCP(Business Continuity Plan)の考え方についてご説明いたします。

BCP(Business Continuity Plan)とは?

何か起こったらどうしよう?

企業の中で責任ある立場であればある程、そして企業として社会に対する存在意義の大きい程、株主・従業員・顧客・協業・提携先・社会のために、何か起こったときの対策をきちんと計画する事が求められます。

この様に、事故や災害などの有事の際に事業を継続するための計画を、事業継続計画「BCP(Business Continuity Plan)」と呼びます。

※似た概念でBCM(Business Continuity Management)やBIA(Business Impact. Analysis)などもあります。

BCP(Business Continuity Plan)

「現実世界で起こる様々な事象」は、「どこか」で発生し、「なにか」に影響を与えます。
この「現実世界で起こる事象」を可視化・分析する際にこそGISの出番となるのです。

ご参考: 内閣府 防災情報

BCPの考え方

BCPの考え方としては、

  • 影響分析(どんな影響をうけるか)
  • 脅威分析(どんな脅威があるか)
  • いかにビジネスを継続・復旧するか
といったシナリオを検討し有事に備えます。

BCPの考え方とカテゴリーの一例 BCPの考え方とカテゴリーの一例

※BCPの考え方、カテゴリーの一例

従業員や自社施設、サプライヤー、サプライヤー網、販売店、地震や洪水などの災害、疫病、事故など、いずれも広域におよぶ情報を地図上に展開し、可視化・分析することで、BCP策定に役立つ様々な情報が得られ、また、その情報を共有することができます。

GISを用いたBCP策定方法

GISを用いたBCP策定のための可視化・分析例をご紹介します。

① 自社施設、従業員、顧客、設備、サプライヤーなどを地図化

② 各種想定災害の地図化(被害想定データ)
  ※今回は例として洪水データを使用

③ ①と②のデータを地図上に重ね、災害別に受ける被害を想定
  ※洪水エリアと重なっている社員やオフィス・店舗が被害を受ける

被害想定マップ 被害想定マップ

④ マーケット情報の地図化(商圏や行政界などに付与)
  ※洪水エリアと重なっている「国勢調査データ」の範囲が、被害を受けるマーケット(顧客)となる

被害想定マップとマーケット情報 被害想定マップとマーケット情報

⑤ ビジネスインパクトをシミュレート(人、施設、交通網、ビジネスなど)
  ※商圏内でどれだけのマーケット(顧客)に影響があるかがわかる

被害想定とマーケット情報のシミュレーションマップ 被害想定とマーケット情報のシミュレーションマップ

⑥ 事業継続策の策定

  • 店舗「青」は営業不可
  • 店舗「緑」は従業員1/3が出社不可になるが、マーケット(顧客)も半分近くが影響をうけるため、店舗営業は可能
  • 店舗「紫」は店舗、従業員の被害なし。マーケットの被害もわずかのため通常営業

また実際に有事が起きた際には、これらのデータをベースとして、安否確認や復旧の進捗確認、ビジネスのリカバリー状況へと応用することが可能です。

災害対策や対応といえばGISが大活躍するシチュエーションですが、自治体、警察、消防などの公共機関だけではなく、この様に民間企業様でもご活用いただけます。

③屋内測位(インドアマッピング)

最後にご紹介するのは、屋内測位(インドアマッピング)におけるGIS活用事例です。
屋内測位(インドアマッピング)とは、屋内に存在する人やモノの位置を測定し、その所在をリアルタイムで把握ことができる技術です。

まずは屋内測位(インドアマッピング)とはなにか?についてご説明いたします。

屋内測位(インドアマッピング)とは?

屋内測位(インドアマッピング)とは、屋内(オフィス、ショッピングモール、工場など)での現在地の情報を取得する技術です。

今までは屋内測位の技術があまり進んでいなかったため、屋内にいる人やモノの正しい位置情報を把握することは難しく、ブラックボックスと化していました。

屋内測位(インドアマッピング)

しかし、近年のIoT技術の発展やセンシングデバイスの進化により、 従来よりも高精度かつ簡単に位置情報を取得できるようになり、 人やモノの位置情報を明らかにすることが可能になりました。

その結果、屋内測位を活用することで

  • 何がどこにあるのか?
  • 誰がどこにいるのか?
がすぐに分かるため、私達の生活の中でも大変活躍をしています。

文章だけでは中々イメージし辛いですよね。
屋内測位が活用されている場面を分かり易くするために、具体的を交えてご説明します。

身近で使われている屋内測位技術

車とスマートキー

「屋内測位」という言葉ですと、あまり耳なじみがない方も多いと思われます。
ですが、皆さんの身近でも以下のようなことで、この技術は活用されているのです。

具体例を見てみると、屋内測位の技術が進歩してきたからこそ可能になったものが多いことがわかります。

車や家のスマートキー 車や玄関までの距離で施錠/解錠が可能に
駅や空港 目的地までの正確なガイダンスが可能に
紛失防止タグ スマートフォンなどにつけたタグの位置を検知することで、紛失を防ぐ
お掃除ロボット 家全体をマッピングし、お掃除状況をユーザーが確認したり、指定の部屋を掃除するよう操作が可能に

では、なぜ屋内測位を使うと上記のようなことが可能になるのでしょうか。
実は、一口に「屋内測位」と言っても様々な手法があり、測位の目的や実施したい事柄によってマッチする手法が異なります。

屋内測位の手法について

次は、複数存在する屋内測位の手法について、それぞれの特徴をご紹介します。

屋内測位では、大きく2つの方法があります。

1つ目は、あるランドマーク※に対して「相対的な位置関係」によって位置を表現する方法です。
「相対的な位置関係」という少し難しい言葉が出てきましたね。
どういうことなのか身近な話で例えてみましょう。

待ち合わせ場所で落ち合う2人

皆さんも友人と待ち合わせをしていて、中々落ち合えない時は「私は今○○駅の●●像の前にいるよ」と、自分がいる場所を相手に説明することはありませんか?
この時、「○○駅の●●像」というお互いに共通で絶対的な位置が認識されているもの(=ランドマーク)を利用し、自分のいる場所を「●●像の前」と伝えることで、相手に自分のおおよその位置伝えることに成功していますね。
これが「相対的な位置関係」によって位置を取得する方法、ということになります。

※ランドマーク:山や高層建築物など,ある特定地域の景観を特徴づける目印のこと。

2つ目は、自律的な計測による起点からの位置を算出する方法です。
こちらは、ランドマークやマップ情報などが不明である未知の領域を開拓する際などに用いられます。

またもやちょっと小難しい言葉が出てきましたね。
例えば、迷路などを思い浮かべていただくと良いと思います。
スタートとゴールの位置だけがわかっている状態で迷路に入った場合、スタート位置からゴールの方向を意識しながら「自分がどの方向にどのくらい歩いたのか?」「何回曲がったか?」を覚えておきつつ、「自分はゴールに近づいているのか?」、「自分が今どのあたりにいるのか?」を意識しながらゴールを目指すと思います。
これが、自律的な計測による起点からの位置を算出する方法、ということになります。

屋内測位で使われる4つの代表的な手法

前項で紹介した方法を自動化できるように、目的や要求精度、計測エリアの環境、コストなどに応じて様々なデバイスや通信規格が開発されています。
先ほどは「方法は大きく分けて2つ」、とご説明しましたが、実は屋内測位で用いられる手法は更に4つの手法に細分化することが出来ます。
それが、「PDR方式」、「RSSI方式」、「超音波・赤外線方式」、「AoA・TDoA方式」の4つです。

屋内測位で使われる4つの代表的な手法 屋内測位で使われる4つの代表的な手法

先ほどご説明した「相対的な位置関係」によって位置を表現する方法に当てはまるものは、「RSSI方式」、「超音波・赤外線方式」、「AoA・TDoA方式」です。
また、これらで用いられる電波や超音波・赤外線以外にも可視光や超音波を用いた方法が研究開発されています。
一方で、自律的な計測による起点からの位置を算出する方法に当てはまるものは、「PDR方式」です。
この4つの手法はそれぞれ特徴や強みがあり、適する場面や状況が異なります。

次はこの4つを比較してそれぞれの特徴と適したケースについて詳しく見てみましょう。

各方式の特徴と活用シーン

各方式を精度、コストの観点でまとめると下記の表のようなイメージとなります。

屋内測位における4つの方式の特徴と活用シーン 屋内測位における4つの方式の特徴と活用シーン

●PDR(Pedestrian Dead Reckoning)方式
人が所持する端末で移動した方位と距離を算出する方式です。最近ではスマートフォンが用いられることもあり、専用機器を設置する必要がないため導入コストを抑えることできます。 例えば、来店したお客様のスマホの情報を活用したスーパーのマーケティングなど、コンシューマを対象とした測位に活用されています。

●RSSI(Received Signal Strength Indicator)方式 ※電波
端末からの電波を強く受けた場合は"近くにある"、弱く受けた場合は"遠くにある"と判定する方式です。例えば、倉庫内の備品の位置を検索することに適しています。 BLEビーコン※などを利用することが多く、簡易に設置でき、他方式と比べてコストを低く抑えることができます。 ※BLEビーコン:Bluetooth Low Energy の略で、近距離無線通信技術Bluetoothの拡張仕様の一つで、極低電力で通信が可能なものを指します。

●超音波・赤外線方式
特定の場所への出入りや測位する範囲が小さい場合に向いています。例えば、入退室管理など特定の場所の通過を検知する場合に適しています。 同様の測位方式として光通信や磁界トリガ(発生させた磁界の中にいるのかを検知)などもあります。

●AoA(Angle of Arrival)/TDoA(Time Difference of Arrival)方式 ※電波
AoA/TDoA共に、RSSI(電波)方式より精度が確保でき、数cm、数十cm程度の精度が実現できます。例えば、高精度であることを活かして、フリーオフィス内のどこに誰がいるのかをピンポイントで把握することができます。 TDoAについては、端末間の時刻を同期する必要があり、システムが大掛かりとなる場合があります。

屋内測位における4つの方式のメリット、デメリット 屋内測位における4つの方式のメリット、デメリット

屋内測位技術が持つ可能性

スマートシティ

屋内測位は日々の技術革新と共に、製造業・オフィス・病院・公共の場など、私たちの生活に密接した様々な場所・場面でも活用されるようになっていくと考えられています。

人やモノの位置を把握できれば、特定の人に対して今いる場所の近隣店舗の情報を配信したり、音声案内を再生したりなど、様々な便利サービスを提供することが可能となります。

また、収集した位置情報を分析することにより、業務効率の改善に活かすこともできるのです。
その他にも、建物内で災害・事故発生した場合に被災者を特定して迅速な救助を可能にしたり、お店に来店したお客様の動線の情報を元に適切な広告をリアルタイム配信したり、など、より便利で快適な生活を実現することに役立つと期待されています。

3.その他の活用事例

前項まででご紹介した活用事例以外でも、様々なシーンでGISは活用されています。
その他の事例については、別のページでご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

4.まとめ:GISを活用すればビジネスの可能性は無限大に広がる

いかがでしょうか?
GISがどのような技術で、どういうことが出来るのか、なんとなくイメージが湧きましたでしょうか?

活用事例を見てみると、GISは様々な業界・業務で活用され、沢山のベネフィットを生み出し、私たちの生活やビジネスシーンを支えていることがお分かりになられたかと思います。

今回紹介した活用事例は、GISの活用事例のほんの一部に過ぎません。

アドソル日進では、GISを通じてお客様の課題解決、ビジネス伸長にお役立ちできるよう、様々なソリューションやサービスを取り揃えております。
GISについてもっと詳しく知りたい方、GISの活用方法について相談してみたい方がいらっしゃいましたら、お気軽に当社までご相談くださいませ。

今回は、GIS(地理情報システム)の活用事例のご紹介ということで、GISが良く利用される事例を3つピックアップし、詳しくご紹介させていただきました。
今後もGISについて様々な角度からの切り口で有益な情報をお届けして参りますので、引き続きよろしくお願いいたします。

5.関連リンク

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