GIS(ジーアイエス):地理情報システムとは、Geographic Information Systemの略称で、「地理情報システム」と訳されます。
GISは、地図にさまざまなデータを重ねて見える化し 、分析・解析することで、業務の改善や社会課題の解決につなげることのできるシステムです。
GISは、実は私たちの生活の中のさまざまなところで使われています。
周りの身近な例を挙げると、
- 外出先で近隣の店舗の検索と店舗までのルート表示し支援する
- 台風発生時に、どこにどれくらいの雨が降るか、ハザードマップの範囲の確認
このページではGISとは何かについて、詳しくご説明させていただきます。
1.GISで出来ること
GISはさまざまなことが出来るシステムですが、主な機能は以下の4つです。
- ビジュアライゼーション機能
地図データ化や、地図化可能な表データを描画し、2D、3Dなどで地図として表示します。 - 空間的な分析機能
複数の地図データを重ね合わせて、近接関係、重なり、経路、集約、補完などの空間的な分析を行います。 - データ作成機能
作図や、CAD等のデータを読み込んで地図データ化、住所からの地図データ変換、分析結果としての地図データ生成が可能です。 - ユーザーインターフェース機能
地図に触れる、操作することが可能です。また、地図の移動・拡大、対象の選択、データの入力が可能です。
2.GISの基本
本項では、GISの基本的な情報についてご説明致します。
GISと座標
現実世界には、あらゆる地物(家、設備、道路、川、建物、土地など)が存在しています。
それらには必ずしも「座標」というものがデータとして、与えられているとは限りません。
例えば住居であれば、位置を表す情報として「住所」のみが与えられているというのが、一般的です。
しかし、地図上で「地物の所在地」を示すには、座標の情報が必要になります。
住所や郵便番号などを座標に変換することをジオコーディングと呼び、その座標を基に「点」のデータとする事ができます。
ジオコードをはじめとする様々な技術を用いることで、現実世界における位置情報を、電子データ化すなわちGISデータ化することが可能です。
GISデータの特徴
GISのデータは、点、線、面の「図形情報」と、文字や数字の「属性情報」が対になっており、1つの図形と、1つのレコードが対応しています。
※一般的なベクトルデータの場合で、マルチポリゴンやラスターデータなどは省きます。
GISに活用できるデータ
実は、私たちが普段の業務で扱っているデータの中には、GISのデータとして活用できるものがあります。
その一例が以下です。
- 住所のついたリスト(店舗一覧、顧客一覧など)
→ジオコーディングによって、座標付与が可能。 - 郵便番号がついたリスト
→郵便番号の中心点の座標を付与可能。もしくは郵便番号をしめす点や面のデータに紐づける。 - メッシュ※番号のついたリスト
→メッシュのデータに紐づけるのが一般的。メッシュの中心点の座標を与えることも可能。 - CADデータ
→ArcGISで取り込みが可能。ただし修正等が必要な場合が多い。 - 画像データ(図面や写真)
→幾何補正(ジオリファレンス)という機能で、大きさや位置やゆがみを補正して、重ねることができる。
※メッシュ:地図を一定の規則に従って分割した領域のこと
3.GISの仕組み
地図データを、幾重にもレイヤーとして重ねることで、地図が完成します。
グラフィックソフト、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)、アニメのセル画の様なものをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
GISはこれらのレイヤーを1枚の「絵」ではなく、レイヤー構造のまま使用します。
※以下の図は自動車系のGISシステムの場合の例
GISデータは何層にも重ねることが可能です。
点、線、面、画像などのデータを多数重ね合わせて、1つの地図として表示し、相互の関係(隣接している、重なっている、含まれている、繋がっている など)を用いてさまざまな分析をすることが可能です。
よく目にするwebマップやカーナビにも同様の技術が活用されています。
4.GISによる分析
GISは、レイヤーとして搭載した図形情報を用いてさまざまな空間的な分析が可能です。
例えば、面と縁の重なり合い、隣接している図形の抽出、バッファーの作成、特定の図形に含まれる別レイヤーの図形の抽出、経路探索、データの補正、データの単純化などが挙げられます。
経路探索はGoogleマップやカーナビでもおなじみの機能です。
※以下は数百にも及ぶ分析の一例
この様に、データをGISで分析することにより、今まで得る事ができなかった新たなデータを生成することができます。
5.図形データと画像データ
GISで使用されるデータは主に2種類あります。
前項まででご説明した「点」、「線」、「面」の様な図形的なデータを「ベクトルデータ(ベクターデータ)」と呼びます。
一方、航空写真や衛星画像、図面などの画像データは「ラスターデータ」と呼びます。
航空写真(空中写真)

航空機(セスナ、ヘリコプター、ドローンなど)にカメラを搭載し、地表を撮影した写真。
衛星画像(衛星写真)

地球観測衛星に搭載したセンサーで観測したデータ、またはそれを画像化したもの
6.GISと他の地図ツールとの違い
前項までは、「GIS」とはどんなものなのか?をご紹介しました。
ポイントとしてはこのような内容でした。
- 図形と表データが対になっている
- 様々なデータをレイヤー構造で扱う
- 図形と図形を用いて様々な分析を行う
しかし、こんな疑問を抱いた方も多いのではないでしょうか?
「カーナビのことだよね?」「Googleマップはよく知っているけれど・・・」
「ゼンリンと何が違うの?」
どれも、「惜しい」のですが、もう少し違いをご説明いたします。
GISと地図データと地図サービス
カーナビ、Googleマップ、Yahoo!MAP・・・
皆さんも、上記の地図サービスを1度は使用したことがあるのではないでしょうか?
生活のデジタル化が進んだことで、紙の地図を使っていた時代よりも格段に地図に触れる機会が増えたかと思います。
世の中には様々な地図データやサービスが存在していますが、これらは一体、GISと何が違うのでしょうか?
GISの構成要素としては、「インフラ」、「データ」、「ソフトウェア」、「アプリケーション」、「人」が必要です。
データ、それも自社データのみではなく、外部データが必須となるとところが、特徴的な点です。(図)
このデータを担うのがGISデータベンダーの方々。
ゼンリン、ジオテクノロジーズ、昭文社などが有名です。
測量などから地図データを作成し、販売されています。
またデータを作成するのにGISが用いられており、GISソフトのヘビーユーザーでもあります。
GISのソフトウェアといえば、ESRI(ArcGIS)が有名です。
事実上のデファクトスタンダード(出典:ARC Advisory Group Report 2019)にして、多彩な機能とラインナップを誇ります。
代表的な製品ArcGIS ProのAdvancedになると、ジオプロセシングツールという処理や分析の機能の数は727にも及びます。(バージョン2.6)
他にはオープンソースのGISなども最近は台頭してきています。
GISソフトウェアだけあっても地図は何も表示されず真っ白ですし、GISデータだけあっても、それを使うソフトウェアが無くては意味がありません(例外はあります)。
「GIS」といいますと、最低限このソフトウェアやWebサービスとデータが組み合わさった状態となります。
身近にある地図システムとの違い
次に「地図のシステム」というと、皆さんが親しみのあるのはカーナビとGoogleマップでしょうか。
カーナビゲーションは用途が明確です。
A点から、B点までの最適な経路を示し案内することに、ハードウェアのデータも仕組も特化しています。

Googleマップに代表されるような地図サービスは、検索したものがどこにあるかを示すことと、地図として表示している範囲内に目的の施設はあるのかを検索するのが得意分野です。
またそれらの場所にはどうやって行くのかという経路探索の機能があります。
これらの機能を用いて、地図としてのシンプルな機能を備えたソリューションやアプリが開発されています。
機能特化か汎用的かの違いかはありますが、カーナビも地図サービスも、GISの一部の機能とあらかじめ用意されたデータがセットになったものです。
分析機能は基本的に経路探索ぐらいで、データの作成機能などはあまりありません。
7.GISの活用分野と当社の実績
前項までは、GISについてご紹介させていただきました。
ここからは、GISが実際にどのような業界や業務でどのように活用されているのか、よくある事例をご紹介いたします。
公益サービス

- 電力・ガス設備管理
- 設備立地計画
- 設備の復旧支援 など
交通

- 道路の維持管理
- 鉄道路線管理
- 空港設備管理 など
天然資源

- 森林資源管理
- 水資源管理
- 河川管理 など
ビジネス

- 店舗の出店計画
- 顧客動向分析
- 営業支援 など
行政

- 都市計画
- 固定資産管理 など
危機管理

- 自然災害対策
- 緊急対応支援
- BCP対策 など
教育

- 自然災害対策
- 緊急対応支援
- BCP対策 など
8.アドソル日進が提供するGISソリューション
アドソル日進のGISは「3つのGISソリューション・コア」をベースに、お客様へ多岐に渡るバリューを提供しています。
①高度GISテクノロジー

100名を超えるGISコンサルタント、GISエンジニア、GISデータサイエンティストなどの専門家による高レベルなテクノロジーとノウハウを活かし、社会を支えるGISシステムの開発から保守までワンストップで提供します。
②GISによる課題解決・提案力

年間100件の導入実績から培ったコンサルティング力により、お客様のDX課題を共に考え、IT×OTにおける最適な地図データの選定と、問題を解決するGISプラットフォームの選定・検討・構築を実施します。
③アライアンス企業との強いリレーションシップ

独立系Sierだからこそ実現できる、多岐にわたるGIS事業のトップ企業とのビジネス連携と戦略的アライアンスにより、100%超えのシナジー効果をもたらす提案とサービスを提供します。
9.まとめ
このページでは、GISとは何か?という一番基本的な情報を、お伝えさせていただきました。
GISは、地図にさまざまなデータを重ねて『見える化』し 、分析・解析することで、業務の改善や社会課題の解決につなげることのできるシステムです。
最適なGISソフトウェアに、必要なデータを搭載し、高度で多彩な分析やヴィジュアライゼーションが可能なことがGISの特長です。
また、GISは私たちの普段の生活を便利にするだけではなく、ビジネスの場でもたくさんの活用方法があります。
当コラムはGISについての情報を皆さんにお伝えし、課題解決、ひいてはDXやデータドリブン経営にお役立てできるよう、これからも様々な情報をお届けしていく予定ですので、お時間あるときにでも御目通しください。
最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。今後も、 有益な情報を発信して参りますので、よろしくお願いいたします。
10.関連リンク
GISプラットフォーム ArcGIS
すぐに利用可能な豊富な地図データや、各種アプリが提供されており、いつでも、どこでも、共有された地図や情報にアクセスすることができます。
https://adniss.jp/products/products-detailed/arcgis.html
デジタル地図の開発プラットフォーム mapbox
様々な情報を集約し自由自在な地図描画を行うことでロケーションデータの活用を推進する地図開発プラットフォームです。
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店舗検索クラウドサービス COCOYA
店舗一覧情報とアイコンをご提供いただくだけで、Webサイトに店舗の地図を簡単に実装できるクラウドサービスです。
https://www.adniss.jp/products/products-detailed/cocoya.html
GIS[地理空間情報]の販売
アドソル日進では、GISのシステム構築やコンサルティング、ソフトウェアの販売のみならず、様々なジャンルのGISデータの販売を行っております。
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2022年09月05日 | 【電気新聞】 「GIS(地理情報システム)特集」に掲載 |
2022年07月29日 | 【地図のDX】マップボックス・ジャパンとパートナー契約を締結 |
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2020年10月14日 | 地理情報システム学会(GIS学会)で講演 |
2020年06月16日 | 【GIS:地理情報システム SUNMAP 】 ウェブサイト・リニューアルのお知らせ |
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