GISとビッグデータ

GISを有効活用しよう! ~活用編 GISとビッグデータ~

今回は、GISとビッグデータの関係性についてお話をしていきたいと思います。

GIS(地理情報システム)が何かを知りたい方は、下記のページで詳しくご紹介しておりますのでそちらをご覧ください。

ビッグデータとは?

ビッグデータという言葉が一般的に普及して10年ほどになります。
ビッグとはどの程度の規模なのだろうかと改めてググってみても、定義は見当たりません。

では実際eコマースビジネス最大手のデータ量を調べてみますと、以下のような数字が確認できます。

タイトル画像

ニールセンMonthly Totalレポート -2020年4月のAmazon利用状況-

ブランド名 利用者数(MAU) 月平均利用回数 購買データ数(月間) 購買データ数(年間)
Amazon 52,534,185 44 約23億件 約276億件
Source: デジタルコンテンツ視聴率 2020年4月 Monthly Totalレポート(トータルデジタル=PCとモバイルの重複を除いた数値)
※PCは2歳以上、モバイルは18歳以上の男女
※集計対象サブカテゴリー:Mass Merchandiser、Shopping Directories&Guides
※Brand及びSub-Brandレベルでの集計、小売店のサービスは除外
※利用とは閲覧のみの利用も含みます
年間購買データ数...276億件

・・・といわれても想像がつかない数字ですね。

2000年代にデータ活用経営のお手本としてウォルマート(日本では西友)が特殊なデータベース機能をもったデータウエアハウス(データ倉庫)のテクノロジーを利用し、在庫分析・売上分析を実行し商品特性や店舗特性もデータとして活用することで在庫と品揃えを最適化する商品の陳列とエブリデイロープライス(最低価格提示)により企業成長を実現したことは有名なお話ではないでしょうか。

昨今ではAmazon、Googleが最新テクノロジー、AIなどを駆使して、より個人の嗜好分析を強化したレコメンデーションを表示提案することにより個人の購買意欲をそそり、ビジネスを成長させています。

ご参考: ニールセン デジタル株式会社 | オンラインショッピングのサービス利用状況

ビッグデータとは、従来の方法では処理が難しいほど大量で多様なデータの集合のことを指します。たとえば以下のようなデータが該当します:

  • SNSやアプリの利用履歴
  • GPSによる位置情報
  • 気象観測データ
  • 電子マネーの決済履歴

このようなデータは、単体では意味を持ちにくいものの、膨大な量を収集・解析することで「人々の行動傾向」や「将来の予測」につながります。

GISとビッグデータが結びつくことでできること

GISとビッグデータを組み合わせると、地図情報の上に「人や自動車の動き」「気象変化」「災害リスク」など、さまざまなリアルタイム情報を重ねて表示・分析できるようになります。これにより、以下のようなことが可能になります。

  • 人流データを活用して店舗の出店場所を最適化する
  • 災害時の避難誘導ルートを可視化する
  • 渋滞予測やバス運行の効率化
  • 環境変化のモニタリング(熱中症リスクや花粉飛散の可視化など)

GIS×ビッグデータは、都市計画、防災、医療、交通、マーケティングなど、日常生活の多くの分野で活用され始めています。

ビッグデータ① -移動体データ-

こうしたビッグデータの世界でGISを併用して活用する例といえば移動体のデータが真っ先に思い浮かびます。

1秒周期で取得される位置データが、通信型カーナビを搭載した10万台の車両から上がってきた場合、1日(86400秒)で、86億4千万レコードにもなります。
これが1年分なら、→3兆1536億レコードです。

こうしたデータを1つ1つの点のまま可視化をしても何もわかりません。
空間的に集計をして、ある程度サマリーしてあげることで、軽くて使いやすく、分かりやすいデータとすることができ、道路別の傾向(平均速度や交通量等)などが分析可能です。

car_data

ビッグデータ② -購買データ-

またエリアマーケティングなどでは、前述の様な購買データなどを活用できます。

顧客の住所データと紐づけ、購買時の気象データと相関を分析すると、気象条件と顧客の購買内容(気温と特定の商品の売り上げの増減)から、気温が何度以上だとアイスクリームがよく売れるか、といった分析が可能となり、商品開発や、天気予報と連動した販売施策などが可能になります。

shop_data

データを蓄積するだけではもちろんこの様な分析結果を生み出すことはできません。
データを保有することはストレージ確保のコストと漏洩リスクを負うのみであり、そのデータをいかに活用しビジネスへの価値を創出するかが多くの企業が抱える課題です。
分析とは仮説と検証を重ね、その結果からビジネスシナリオを作り出すことで、初めてビッグデータを蓄える意義が生まれるのです。

ビッグデータの活用には、もちろんそれにふさわしいITインフラが必要になりますが、データドリブンなビジネスのためには、ご検討いただく価値があるのではないでしょうか。

身近な事例と活用について

GISとビッグデータでの身近な事例と活用について紹介します。

身近な事例と活用については、実際に知らずに使われていることもあるかと思います。
活用の仕方では、これからもっと増えていく可能性なども秘めていますので自身の業界でも使うことができないかどうかを含めて、見てみてください。

ユースケース1:災害時の避難誘導マップ

自治体では、豪雨や地震などの災害時に、リアルタイムの危険エリア情報を地図に反映し、避難所へのルートを案内しています。これは、住民のスマートフォンに通知されたり、防災アプリに表示されたりしています。

ユースケース2:コンビニやスーパーの出店戦略

企業は、「どこに店を出せば利益が出るか」をGISとビッグデータで分析しています。人口密度、競合店舗、人の流れ、道路状況などを加味することで、より正確な出店判断が可能になります。

ユースケース3:交通混雑の緩和とバス運行の最適化

バス会社や自治体では、ICカードの乗降データやGPS情報を分析して「どの路線に需要があるか」「どこが混雑するか」を見える化しています。これにより、効率的なダイヤ調整や新規路線の導入が行われています。

ユースケース4:農業・林業

ドローンや衛星データを使い、作物の生育状況や土壌状態を可視化し、最適な収穫時期や施肥量を決定する「スマート農業」もGISとビッグデータによるものです。

ユースケース5:観光・地域活性化

観光地の来訪者数や移動ルートを分析し、効果的な観光施策や交通インフラの整備が行われています。人気のある観光地や混雑しやすい時間帯の可視化も可能です。

ユースケース6:医療・介護

高齢化が進む中、病院や介護施設の配置計画にGISが活用されています。患者の分布や移動範囲をもとに、サービスの偏りをなくす支援が可能になります。

GISとビッグデータの今後の可能性

AIの発展により、GISとビッグデータの連携はさらに進んでいきます。AIが自動で地図情報と各種ビッグデータを解析し、「事故の起こりやすい場所」「犯罪の起きやすい時間帯」などを予測する社会の実現も遠くありません。

また、5GやIoTの普及により、リアルタイムでより精緻なデータの収集と可視化が可能となり、精密な都市運営や災害対応が期待されています。

まとめ:GISとビッグデータは暮らしを豊かにするツール

GISとビッグデータは、専門的な技術に見えるかもしれませんが、私たちの生活の中にすでに深く入り込んでいます。スマホの地図アプリ、災害時の避難情報、通勤電車の混雑回避などこれらはすべて、GISとビッグデータが支えています。

今後さらにこれらの技術が進化することで、より安心で便利な社会が築かれていくでしょう。身近なところから少しずつ、この仕組みに興味を持ってもらえたら幸いです。

いかがでしたでしょうか?
今回は、ビッグデータの活用についてお話させていただきました。

今後もGISについて様々な角度からの切り口で有益な情報をお届けして参ります。
どうぞ楽しみにお待ちください!

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